メディア掲載

Public Relations

医薬経済WEBに掲載のインタビュー全文公開

「組織力」で展開する在宅医療に光明


元徳洲会グループ病院長が率いるあい友会の画期的な「モデル」

2022年8月15日号

「あい太田クリニックから全国展開へ」

高齢化社会のいま、最もホットなのが在宅医療だ。いや、新型コロナウイルス感染が拡大しているだけに、より必要とされている。すでに各地で訪問診療が行われているが、そのなかで〝一歩抜きん出ている〟と評価されているのが、群馬県太田市に拠点を置く医療法人「あい友会」だ。
何しろ、野末睦理事長が率いるあい友会は群馬県太田市の「あい太田クリニック」を中心に、山形県三川町の「あい庄内クリニック」に加え、昨年、開院した群馬県前橋市の「あい駒形クリニック」の三施設で訪問診療を行っているのである。それも複数の医師が看護師や薬剤師、理学療法士、栄養士、支援スタッフたちとチームを組み、患者宅を訪問するのだ。患者にとっては「クリニックが自宅に出張してきた」かのように映る。

野末理事長は自身の経験から在宅医療の普及を阻む難題を克服するために独自の「AIUモデル」を考案。各地の在宅医療を行っているクリニックに活用してほしいと呼び掛けている。

このAIUモデルとは何か。実践する太田市のあい太田クリニックを覗いてみる。

医師5人で750人を診る

ともかく、あい太田クリニックを訪ねると驚くこと請け合いだ。ドアを開けると、広いフロアに向かい合った机の列が四列も並び、それぞれの机では白衣を着た人たちがパソコンを見ながら何やら仕事をしている。まるでIT関連会社に迷い込んだかのような感じなのだ。だが、これが、あい友会の訪問診療の現場なのだという。入口に近いほうの1列(ブース)は医師たちの席、2番目の列の半分は栄養士や車の運転などをする訪問診療アシスタントたちで、向かい合う反対側の席と3列目のブースは看護師……と続く。人がいない席は目下、訪問診療、あるいは往診に出掛けているそうだ。

野末理事長は訪問診療の魅力を「患者の人生のストーリーにダイレクトに触れることです」と話す。

「例えば、人数は多くありませんが、末期がんの患者は60%がだいたい1ヵ月ほどで亡くなります。そういう患者に行く回数は多くなり、診療時間も長くなります。その診療のなかで患者は人生を語ってくれる。家族を巻き込みながらの人生にダイレクトに触れることができる。患者が話すストーリーは私にとって人生のコーチです」

それは医師の原点かもしれない。だが、訪問診療を続けるにはいくつもの困難がある。野末氏は「訪問診療、往診は365日、24時間体制が必要です。それを行うためには複数の医師がチームを組むことが不可欠」と強調する。

野末氏は長野市で育ち、筑波大学医学専門学群を卒業した消化器外科医。大学の臨床医学系講師の後、米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の研究員になり、帰国後、知人の紹介で山形県の庄内余目病院(徳洲会グループ)の院長に就任。余目病院は訪問医療も行っていて、担当医師が休みのときに、代理で訪問診療を経験したことがあったが、当時は後に自分が訪問診療をやるとは考えていなかったそうだ。院長退任後の14年、知人が誘ってくれたのが太田市での開業だったという。

余談だが、野末氏の専門は消化器外科だが、開業後、どういうわけかマスコミに「フットケアの名医」と紹介され、外反母趾や胼胝などの患者が殺到。現在もフットケアの患者の受診者が絶えない。

ともかく、野末理事長によれば、「地縁も無ければ、母校の筑波大とも離れていて知り合いの医師もいない土地での訪問診察の開業だったが、地元の病院や介護施設から次々に患者を紹介された」という。単独の診療で疲れかけた1年後には現在のあい駒形クリニック院長の中村俊喜医師が加わり、一息ついたそうだ。その後、訪問診察に意欲を燃やす医師や看護師たちが参加して充実。いまや、あい太田クリニックを中心に3拠点に拡大、122人のスタッフで2000人の患者の訪問診療を行うばかりか、訪問看護、訪問介護も手掛ける。

こうしたなかで野末氏が考え付いたのがAIUモデルだという。骨子は「常勤医師5人が750人の患者に対応する」というものだ。

野末氏が説明する。

「訪問診察は年中無休です。しかし、多くの訪問診療所は1人の医師が行っている。これでは労働過多で長続きしなくなる。それを避けるためには常勤医師5人が750人の患者の訪問診療を行うことを最小ユニットにした多人数医師による診療体制が必要です。医師が5人いれば、平日は4人で診療を回し、土日はもうひとりの医師が対応することで、医師の労働過多を回避できますし、患者にも十分な医療を提供できます」

実は、在宅医療の学会で野末氏がこのAIUモデルを講演したとき、出席していた医師から「医師5人で750人の患者というのは〝黄金比率〟だ」と評価されたが、まさに言い得て妙だ。

野末氏が続ける。
「2番目には高品質の医療の提供です。訪問診療はターミナルケアだけではない。慢性腎臓病患者もいれば、口腔ケアで病状が見違えるほどよくなる患者もいるし、嚥下機能障害への対応が必要な患者も多い。さらに施設の入居者には脳卒中や認知症、呼吸器疾患、パーキンソン病患者など、さまざまな患者がいますが、専門医師でなくてもいい。医師は各診療科目を履修し体験していますから気持ちさえあればやれる。現に基礎研究をしていた医師が臨床をしたいとチームに加わっています」

訪問診療では末期がん患者のターミナルケアが注目されがちだが、実際にはそれだけではない。野末氏によれば、「末期がん患者のターミナルケアは全患者の1割程度に過ぎない」そうだ。背景には、訪問診療を必要とする患者は介護施設に多いという現実にあるようだ。

ともかく、あい友会では医師と看護師に薬剤師、理学療法士、栄養士、歯科医師、歯科衛生士、支援サポートなどがチームをつくり、ポータブル型超音波装置やレントゲン装置、ポータブル型内視鏡などを携えて訪問診療を行っている。「クリニックがやってきた」と思うのも、あながち誇大ではない。

訪問診療は月2回の診察が基本で、料金は患者の病状によるが、ざっと7万円ほどだ。ほとんどの患者が後期高齢者だから原則は1割負担の7000円になる。ところが、最近、「訪問診療を月1回にしてほしい」という患者が増えているという。「容体がよくなったからではない。生活保護を受ける人が増え、医療費を払えなくなったというのがその理由です」と野末氏は悲しむ。

もうひとつ、野末氏はAIUモデルを支えるものとしてDX(デジタル・トランスフォーメーション)を挙げる。月2回の訪問診療中に往診が入ることも多い。そんな場合に往診中のチームへの連絡、患者との応答、診察へのナビゲートなど、突発的なことにも対応できるように常に診察チームの位置情報や連絡が欠かせない。冒頭に紹介したあい太田クリニック内で医師や看護師たちがパソコンと睨めっこしているのが、実はAIUモデルのDXなのだ。

いま、野末氏はAIUモデルを引っ提げて全国展開を考えている。手始めに神奈川県逗子市と出身地の長野市に進出を計画しているが、彼の全国展開とは訪問診療を行っている「仲間たちにAIUモデルを活用してほしい」という意味だ。団塊世代が後期高齢者入りする25年には在宅医療の充実が不可欠になるだけに耳を傾ける必要がある。

医療法人あい友会では、チームの中枢を担う
医師・看護師・その他スタッフを随時募集しています!

採用情報を見る あい友会をもっと知る

一覧に戻る

取材・講演会のご依頼はこちら


在宅医療の啓蒙・普及に繋がる取材は積極的にお受けしております。あい友会を取材いただけるメディア様、また講演をご希望の方は、こちらからお問合せください。

ご依頼フォーム