巻き爪の原因と予防法、陥入爪との違いを解説

野末 睦
医療法人あい友会 理事長
野末 睦

皆さん、おはようございます。

ようやく、コロナの感染もピークを過ぎてきましたね。(2022年8月執筆時点)

お盆はいかがお過ごしでしたでしょうか?

我が家では、子どもとその家族が全員集まることができました。

ちょっと不思議なお話。

夜に、我が家のチャイムがピンポーンと鳴って、その時いた次男が外に出てみたら、誰もいなくて、おかしいなと思って、玄関の方に戻ろうとしたら、門扉がぎーっと開いたとのこと。

次男はゾワッとして、「来なくていいよ」と言って門扉を閉めたとのこと。

もしかしたら、死んだおじいちゃんが来たのではと皆で話しました。
寂しく帰ってしまったかもねと。
嬉しいような、ちょっと気味が悪いような、申し訳ないことをしてしまったような、、、、

さて、これから、足の病変、爪の病変などについて、お話していきたいと思います。

その手始めとして、今回のテーマは巻き爪と陥入爪(かんにゅうそう)についてです。

皆さんは、巻き爪と陥入爪の区別、対処法の違いなどご存知でしょうか?

そして、巻き爪はどうしてできてしまうのでしょうか?

実は、歩行しなくなった高齢者は、ほぼ全員巻き爪になってしまっています。

身近な高齢者の足を見てみてください!

巻き爪とはどのような状態か

そもそも巻き爪とはどんな状態の爪のことを言うのでしょうか。

お恥ずかしながら、私も50歳を過ぎるまで巻き爪のことをよく知りませんでした。

巻き爪とは、爪を足先の方から見たときに、足の指先の骨を包むように、丸く変形した状態の爪のことを言います。

まさに、指先の骨を襟巻きのように巻いているので、巻き爪と言うのです。

そしてなんと、もし足先の指腹側からの力がなくなると、爪は自然に巻いてきてしまうのです。

日々歩いているときには、足先や、親指の腹に大地からの力がかかるので、巻き爪にならないのです。

その大地からの力をしっかりと受け止める働きを、爪がしているのです。

ですから、歩行できなくなってしまった人は、この大地からの力がかからなくなってしまうので、巻き爪になってしまうのです。

歩いている人も巻き爪になる理由

歩くことで、大地から足の親指にかかる力。これがなくなると、巻き爪になってしまうということをお伝えいたしました。

ところが、多くの日本人は、歩いていてもこの大地からの力がなかなか親指に伝わってきません。
巻き爪になってしまう場合もあります。

どうしてでしょうか。

試しに、裸足で床の上に立ってみてください。

もしかしたら、親指が少し浮いたような感じになっていませんか?

そして、薄い紙なら、親指の指腹と床の間をさほどの抵抗なく、通り抜けるかもしれません。

また最近では、色々なところで歩行時の足への負荷を計測する機器が導入されていますので、皆さんもやってみてもいいかもしれません。

そういった機器で計測すると、やはり多くの日本人で、足先への荷重がとても少ないことがわかります。

足先に荷重がかかりにくく、巻き爪になってしまう足の特徴として、ほとんどの場合、いわゆる「土踏まず」がない、あるいは低くなっていることがあげられます。

つまり、扁平足です。

これにによって、歩いていても足先に荷重がかからず、巻き爪になってしまうことがあるのです。

そして、多くの日本人が扁平足なのです。

偏平足の簡単な確認方法

裸足で床に立ってみてください。

もしかしたら、土踏まずがあまり分からないのではないでしょうか?

そしてその状態で、誰か他の人に土踏まずを持ち上げてみてもらってください。

少し上を向いていた親指が少し下を向いて、床をしっかりと踏むようになります。

ですから、土踏まずをしっかりと支えることが巻き爪の予防になるのです。

巻き爪の予防方法

土踏まずの支えとなるのが、インソールと呼ばれる、靴の中敷きです。

自分の足にあったインソールを専門の業者に作ってもらい、靴の中に最初からある中敷きと取り替えることによって、巻き爪を予防する。

そしてこのようなインソールを入れると、姿勢が良くなり、立位、歩行時、運動している時の安定性が格段に増します。

日本にはもともと靴文化があったわけではないので、靴やインソールについての知識が不足している面があります。

私もそれほど詳しいわけではないですが、インソールは何セットか作っていて、その快適さを毎日感じています。

インソールの作り方

さて、インソールをどうやって作ることができるかという話をしたいと思います。

足に合った、しかもある程度の強度を持つインソールを作れるところは、実はあまり多くありません。

当法人のあい太田クリニッにかかっている患者さんの場合は、京都からこの分野で有名な「日本フットケアサービス」というところにお願いをしています。

専門の義肢装具士を京都からお呼びして、患者さんのところに出向いて型取りし、京都の本社に持ち帰ってインソールを作り、出来上がったインソールは太田に送り返してもらい、その義肢装具士にフィッティングをしていただくという手順です。

インソールの製作では、偏平足で、巻き爪などができてしまっている場合には、保険がききます。

もう一つの手段としては、保険はききませんが、フィートインデザイン(FEET in DESIGN)という、日本橋にある会社に行って、型を取って作成するという方法があります。

こちらは自費ですのでそれなりの価格がしますが、とても使いやすいもので、いろいろなスポーツに合わせたものもあります。

多くのプロゴルファーがここでインソールを作って、成績が驚くほど向上したとか。

以前に、二度ほどこのフィートインデザイン社の方に、あい太田クリニックに来てもらい、インソールを作成してもらいました。

その時に私も作ったのですが、ゴルフスコアはあまり改善していません。

ほかの要素が悪すぎるのでしょう。

なるべく早く、このインソールの力を利用できるくらいにうまくなりたいものです。

巻き爪の治療方法

巻き爪は、大地からの力が足指の腹に十分かからないためにおこってしまう。

また適切なインソールを使うことによって、足指の腹に掛かる力を増すことができるとお話しました。

ただ、このような治療法は、根本的な治療法で、安全ですが、とても時間がかかります。

ですから、インソールを作ると同時に、あるいは少し先行して、ワイヤーなどを使って巻いた爪を少し平らにするような治療が必要です。

3TO(VHO)式巻き爪矯正法とは

私が用いている方法は「3TO」と呼ばれている、ドイツから入ってきている方法です。これは、

  1. 専用のスチール鋼を爪の大きさに合わせて切り、爪の湾曲状態に合わせてワイヤーを湾曲させ、
  2. これを爪の左右に引っ掛け、専用のフックを用いて巻き上げ、固定し、
  3. 余分なワイヤーをカットした後、人工爪でワイヤーの固定部分をカバーする。

という手順で行う方法です。

この状態で約3ヶ月そのままにしておくと、次第に巻いた爪がもとに戻ってきます。

そこにインソールを使って、大地からの力を足指の腹の部分にかかるようにすると、あとは歩くだけで巻き爪が治っていきます。

巻き爪治療の完成というわけです。

ただし、これから歩行をすることが見込めそうもない方にとっては、このワイヤー治療は適応ではありません。

なぜなら、一旦平らになった爪も、力が適切にかからないと、再び巻いてきてしまうからです。
いかがでしょうか?

このワイヤー治療にご興味がある方は、足・爪病変に対応している医療機関にご相談してみてください。あるいは、私までご連絡くださってもかまいません。

陥入爪とは|巻き爪とよく似た症状に注意

また、巻き爪と勘違いされやすい症状に、陥入爪(かんにゅうそう)というものがあります。

陥入爪は、爪の先端の角など、爪の一部が、周りの組織の中に食い込んで、組織を傷つけ、そこに細菌が入って赤く腫れ、痛みを伴ったような状態をいいます。

爪の形は関係ないので、巻き爪の人もいますし、とても綺麗な形をした爪の人もいます。

陥入爪の治療方法

陥入爪(かんにゅうそう)はとても痛いし、腫れているので、直ちに治療が必要です。

その腫れの程度にもよりますが、最初は出来るだけ靴を履かないようにしてもらいながら、抗菌剤を1週間ほど内服してもらいます。

陥入爪の治療で行う「ガター法」とは

抗菌剤の内服と同時に、あるいは感染が少し落ち着いたところで行う治療に「ガター法」があります。

ガター法とは、皮膚と爪の間にチューブを入れ込み、チューブによって爪の食い込みから皮膚を保護する治療法です。

チューブとして、私達は点滴の際に用いる翼状針のカバーを用いています。

カバーを縦に裂いて、そこに爪の端を入れて、食い込みを防ぐのです。

そしてそのカバーは、特殊なジェルで爪に固定します。

これらの処置は、親指だけに効く局所麻酔を使って行いますので、痛みがありません。

また麻酔が覚めたあとも、陥入爪の痛みが嘘のように消えていることがほとんどです。

この状態で、炎症が完全に静まるまでそのままにしておきます。

巻き爪や陥入爪になった時は医療機関に相談を

さて、巻き爪の話はいかがでしたでしょうか?

日本人には扁平足が多いために、足指の腹趾腹に大地からの力がかかりにくく、巻き爪になりやすいこと。

それを治すには、インソールが必要なこと。

また、ワイヤー治療も、力を発揮することなどお話ししました。

重要なのは、歩けなくなってしまった人は巻き爪になるわけですが、それだけだと痛みはあまり生じないため、治療の対象にはならないのです。

ワイヤーなどで治療する方法もありますが、それが終了するとまた元に戻ってしまったり、さらに激しく巻いてしまったりすることもあります。

また、陥入爪には、特別な治療法がありますので、困った方はぜひ足爪の治療に対応している医療機関にご相談してみてください。

巻き爪と陥入爪の相違点などもしっかりと理解しておくことが大事ですね。

爪の話をしていくと、まだまだ尽きません。

次回、続けていくか、それとも次の話題に行くか、、、もう少し、試行錯誤していきたいと思います。

では!

参考文献

「あい」のメルマガ(連携編)≪世にも奇妙な話と、新シリーズ 足&爪病変≫ №82-2022.08.19号
「あい」のメルマガ(連携編)≪なぜ巻き爪になる?/足&爪病変シリーズ -2-≫ №83-2022.08.26号
「あい」のメルマガ(連携編)≪あなたの足の親指、浮いていませんか?/足&爪病変シリーズ -3-≫ №84-2022.09.02号
「あい」のメルマガ(連携編)≪巻き爪予防に関わる土踏まず/足&爪病変シリーズ -4-≫ №85-2022.09.09号
「あい」のメルマガ(連携編)≪巻き爪予防にインソール/足&爪病変シリーズ -5-≫ №86-2022.09.16号
「あい」のメルマガ(連携編)≪巻き爪を元に戻す方法とは/足&爪病変シリーズ -6-≫ №93-2022.11.04号
「あい」のメルマガ(連携編)≪巻き爪と陥入爪の違い/足&爪病変シリーズ -7-≫ №94-2022.11.11号
「あい」のメルマガ(連携編)≪陥入爪の痛みもスッと引く?ガター方/足&爪病変シリーズ -8-≫ №96-2022.11.25号

※このコラムは、医療法人あい友会メルマガ「あいのメルマガ」を再編集したものです。

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この記事を書いた人 野末 睦
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総合内科 消化器外科 日本在宅医療連合学会 認定専門指導医

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