BSCとは?緩和ケアとQOL維持向上でがん患者さんに寄り添う在宅医療

BSCとは?緩和ケアとQOL維持向上を含む概念

がんに対する手術や抗がん剤投与などの積極的な治療ができなくなってしまったり、患者さんやそのご家族がそのような治療を希望しなくなったりしたときに、よく使われる言葉として「BSC(Best Supportive Care)に移行する」というものがあります。

たとえば、診療情報提供書(紹介状)などに「多発骨転移に対して、抗がん剤治療を行ってきましたが、病状は進行し、今後はBSCの方針となり、退院の方向となりました。今後は貴院での在宅医療を希望されています」なんて書かれているのを目にすることもあるでしょう。

「BSCって何?」と思われる方は多いかと思います。私もそうでした。7年前に在宅医療に身を投じた頃、退院調整会議で病院の医師から「今後はBSCでいきたいと思います」なんて言われたときに、「それ、なんですか?」と尋ねたのを覚えています。

調べてみると、BSCとは腫瘍学の臨床試験分野で使われていた言葉で、「がんに対する積極的治療を行わずに症状緩和の治療のみを行うこと」と定義されています。

痛みの緩和ケアだけでなく、生活の質(QOL:quality of life)の維持向上も含む概念だとされています。

しかし、実際の場面では先程のように、曖昧なニュアンスで「病院医療の一方的な撤退宣言」のように使われていることが多いのではないかと思われます。がんへの治療を目的として入院していることが多いので、BSCとなったら、退院の話をするのは仕方ないし、そうあるべきだと思います。

ですからBSCは在宅医療でこそ実施されるべき医療、ケアになります。そこには「痛みの緩和ケアのみならず、QOLの維持向上」を目指すというコンセプトがとても大切になります。

ここでは、痛みの緩和ケアではなく、QOLの維持向上という意味で、在宅医療が果たす役割について、代表的な場面を見ていきます。

緩和ケア以外に在宅医療できる5つのBSC

緩和口腔ケア

食事や水分を十分に取れなくなると、口のなかが汚くなりがちです。そのような状況で、患者さん自身が歯を磨くということのほかに、医療従事者やご家族が口のなかを綺麗にする事を口腔ケアといいます。

口腔ケアを適切に行うと、まずは口腔内の乾燥が緩和され、喉のヒリヒリした痛みなどが緩和されます。

患者さんはどうしても口を開けて呼吸することが多くなりがちです。加えて酸素投与などの場合には、その「風」により口のなかはますます乾燥するため、口腔ケアは保湿の役割も果たします。

また、口のなかを綺麗にすると、いわゆる口腔内の雑菌が減るため誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしにくくなります。後述しますが、体力がなくなってくると飲み込みの機能が衰え、誤嚥しやすくなるので、その場合でも肺炎にならないようにするために、口腔内を綺麗にしておくことがとても大事です。

緩和リハビリ

がんが広がってきて、栄養状態も悪くなってくると、患者さんは痛みもさることながら、体のだるさを訴えることが多くなってきます。

このようなときには、マッサージや関節の運動を行うことが最も効果的であり、ここで活躍するのが理学療法士です。

専門的に、四肢の運動を加えると、心地よさが広がっていきます。トレーニングではないので激しい運動は行いませんが、ストレッチ、マッサージが中心となるものです。

摂食・嚥下、栄養サポート

体力がなくなってきたり、意識が朦朧としてくると、飲み込む力が衰えてきます。

また、味覚も変わり、食欲も低下して、なかなか食が進みません。がんで亡くなる方の多くは、栄養障害で亡くなるといわれておりますので、この嚥下機能と食欲の低下に対する方策を考えることが、とても大事になります。

食事のときの姿勢、食事の形態、栄養補助食品の紹介など、この摂食・嚥下に関する情報提供と、効果ある対策の実践は、やはりとても大事なことになります。

語らいの場の提供

そして最後に、とても重要なBSCがあります。それは語らいの場の設定、提供です。

患者さん同士の語らいの場として、「マギーズハウス(※)」が有名ですが、そのような機能を果たす仕組みを色々と考えていきます。

(※)マギーズハウス(マギーズセンター):「がんの治療中でも、患者ではなく一人の人間でいられる場所と、友人のような道案内がほしい」という創設者の願いから、1996年に英国で誕生。今では英国内に20か所以上、香港やスペインなどへも広がっており、2016年、日本で初めて東京にオープン。

たとえば、ご家族の間で感謝の言葉を伝え合う環境をつくることや、在宅医が訪問したときには、できるだけ時間をとって、その患者さんの人生について語ってもらいます。家のなかにある飾り物や写真を話題にすることもしばしばです。

このようなプロセスを経て、患者さんはご自分の人生を肯定的に捉えるようになります。

法的な事柄の整理

場合によっては、遺産相続について、後見人についてなど、法的な相談に乗ることもあります。もちろん、医療機関が行うことではないのですが、なかなかこのようなことを相談できるところまでたどり着いていないのが実情です。

在宅医も大まかな知識を備え、患者さん、あるいはそのご家族からの質問に、答えることも必要になります。

BSCで緩和ケアと同時にQOLを維持向上

このように、がんそのものの治療は終えたとしても、より良い生活を送るために、さまざまな工夫があります。BSCこそが在宅医療の出番であるといえます。

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